自作キーボードで肩こりが激減した話

2018/9/9 981hit

最近自作キーボードにハマっています。
自作キーボードと言うと、奇妙とか難しそうという印象がつきまとうのですが、私の場合は肩こりが激減するという、それに有り余るメリットを享受することが出来たので、一人でも多くの人にこの世界を知ってほしいと思います。

自作キーボードとの出会い

私が初めて自作キーボードに出会ったのはInfinity Ergodoxというキーボードで、購入のきっかけはハンダの練習をしたかったから。
それまで数十年ハンダを触っていなかったので久しぶりになにか電子工作をしてみたいと思い、ちょうどMassdropsで変わったキーボードの自作キットが出品されていると聞いて購入しました。
ちょうどその頃、マジェスタッチ2の馴染み具合が良い感じになっていて気持ちよくタイピングできていたので作っても実際には使わないだろうなぁと思っていました。
ところがこのキーボード、今でもメインに使っていて、かなり満足度が高い商品です。

使っているうちに少しずつカスタマイズしました。

購入当初はこういうちょっと未来的なデザインでした。キーキャップは無刻印のものが付属していたのですが使いこなせる自信がなくそれまで使っていたマジェスタッチのものを流用しました。


黒いキートップは野暮ったい気がしたのでTaihaoの白いキートップに変更しました。キートップが変わるだけで印象が大きく変わります。
このあと静音用のリングを付けたのですが、静かになった以上にタイピングのフィーリングが変わって気持ちよくなりました。


現在はボディを木製に変えて、キートップは上海問屋で安く出ていた丸型に変更しレトロ調としています。
丸型のキートップは見た目は良いけれど部品の強度がイマイチでたまにぐらつきが発生します。
オレンジのLEDをバックライト用に付けたのですが、これもまた白熱灯のようで雰囲気があって好きです。

自作キーボードとは

市販品のキーボードを買ってきて使用するのではなく、自分でキーボードを組み立てます。
自作キーボードはハンダゴテなどを使用する分、自作PCなどと比べるとやや難易度が高い分野になります。
一方で1〜2万円程度で作成できるので、失敗しても被害が少なく、その意味では敷居が低いとも言えます。

利用と作成、2つの魅力。

自作キーボードは大きく、利用と作成の2つにおいて魅力があります。

利用の魅力

自作キーボードの最大のメリットは普段使いで利用することが出来ることでしょう。
しかも、そのキーボードは市販品のキーボードより使い勝手が良いのです。
一般的に自作は作ることが楽しいのであって、特に電子工作では作ったは良いけれど使わないものになりがち、
その点自作キーボードに関しては、実用品として日常的に使うものを作ることが出来ます。

しかも、自作キーボードには市販キーボードにはない魅力があります。
もちろん「自作」するので普通の市販キーボードと同じ構造を作ることも出来るのですが、自作キーボード界隈では最近市販キーボードにはない魅力を実現する機能のトレンドが出来つつあります。

それが左右分割、格子配列、親指重視、レイヤー分割

左右分割の魅力

左右分割型はその名の通りキーボードが右手で押すキーと左手で押すキーの2枚構造に分かれている構造です。
市販のキーボードではまず見かけない形ですが、自作キーボードではむしろ左右分割していないほうが珍しがられるほど一般的な構造になっています。
これにより、両手を広げたような形でキー操作を行うことになり、肩の筋肉が圧迫されず肩こりが激減します。
また、両肩を広げることができるので椅子の肘掛けに肘を置いたままキー操作を行うなどより肩の負担を下げる使い方もできます。
私はそれまで、慢性的な肩こりに悩んでいたのですが、見事に今では肩こりがなくなり、たまに外出先でノートPCの一般的なキーボードを使っているときに肩こりがおきて、そういえばPCを使えば肩こりが起きたっけと懐かしく思うくらい。
あまりに左右分割の使い勝手が一体型よりも良すぎるので、個人的にはすべてのキーボードは左右分割であってほしいくらいなのですが残念ながら市販品で左右分割を採用しているキーボードはほとんど存在しません。あるいは存在していてもとても高価で購入をためらってしまうものばかりです。
現状で言うと左右分割キーボードを使う最良の方法は自分で作るしかありません。
言うまでもなく、ほとんどの自作キーボードを作っている人たちも以前は従来型の一体型キーボードを普段使いしてきた人たちです。その人達が左右分割キーボードを作って使ってみて、コストのかかる左右分離型キーボードばかりを作るようになっているという事実から言っても左右分割の優位性は明らかだと思っています。
なぜ市販品が真似をしようとしないのか不思議で仕方がありません。

格子配列の魅力

格子配列というのは、キーボードが縦方向に一直線に並んでいるキーボードのこと。
本質的に言うと縦横どちらも一直線に並んでいるキーボードが格子配列と言うべきなのでしょうが、なぜかErgodoxのように横方向がずれているキーボードも縦方向が一直線であれば格子配列と言われています。
一般的なキーボードは横方向は一直線に並んでいて縦方向は斜めにずれています。

格子配列は好き好き分かれるようで自作キーボード界隈でも格子配列派と斜め配列派に分かれています。
個人的には格子配列を気に入っていて、この配列のおかげでキーを押す指がはっきり分かれるようになりました。
例えば、それまではMキーを人差し指で押すか、中指で押すかあいまいだったのですが、格子配列では人差し指のホームポジションJの真下にMキーが配置されるため、中指でMキーを押すことはかなり不自然な指の形となり、自然とMキーは人差し指で必ず押すように矯正されました。
この効果は普通の斜め配列キーボードを使うときにもメリットとして現れている気がします。
左右分離ほど絶対ではないものの格子配列もまた私が自作キーボードを使っている理由です。

親指重視

市販のキーボードでは、ESC,Ctrl,Shift,Alt,Deleteなど多くの特殊キーを小指で入力します。
しかし、小指は指の中でも最弱。一方で最強の指である親指がなぜかスペースキーを押すためにしか使われていません。
家庭用ゲーム機や携帯電話が親指でほとんどの入力を行うのとは対照的です。
自作キーボード界隈では親指周りに複数のキーを配置して親指で行う操作を増やして小指の負担を減らしています。

レイヤー分割

多くの自作キーボードではレイヤーと呼ばれるモードを使用しています。
レイヤーは体感的に言えばShiftキーを押しながら数字キーを押すと記号が入力される感じに近いです。
自作キーボードではこれに加えて独自のレイヤーを複数追加することが一般的です。
レイヤーを増やすと同時に押さないといけないキーが増えて操作が難しくなるのですが、代わりに指の移動量が減ってキー操作が楽になったり、キースイッチを減らすことでキーボードを小さくしたり、製造コストを下げることが出来たりします。

私の場合は他人のマシンを触るときや、出張中など一般的なキーボードを使うこともあるため、レイヤーの数は増やしすぎず2レイヤーを追加する構成をよく使っています。
1つめのレイヤーではasdfghjkl;をそれぞれ1234567890に割り当てていて、これによりホームポジションに指をおいたまま数字入力をできるようにしています。 それまでは6や7の入力が苦労していたのですがこれによりずっと楽に入力できるようになりました。、また私が使っているキーボードでは高さが5段しかなくファンクションキーに当たる部分のキーが存在しないため、ファンクションキーをそれぞれ数字キーの真上に当たるqwertyuiop\?に割り当てています
2つ目のレイヤーではキーボードへのプログラム書き込みやLEDの明るさ調整など、普段は使用しない設定を行うために用意しています。

独自配列に慣れるのにかかった時間。

このような特殊な形状、キー配列をしているため、一般の人がいきなり操作しようとしても操作を戸惑うかと思います。
多くの自作キーボードに躊躇してしまいう原因がここにあるような気がします。
私の場合はこの変更に慣れて元のキーボードと同じ様に操作できるようになるために約3ヶ月かかりました。
その3ヶ月の間は初心者に戻った気分でゆっくりキー操作を覚える必要がありました。
3ヶ月というとかなり長い期間のように思えますが、その後ずっと肩こりから開放されるのであればかなり投資しがいのある3ヶ月だったなと思います。
また、3ヶ月と言っても3ヶ月ずっと駄目だったわけではなく、2ヶ月を超えたあたりでは特殊キー以外はほぼ自然に入力できるようになっていましたし、その間も時間はゆっくりになっても仕事をすることは出来たので、仕事的なロスタイムでいうと一ヶ月くらいです。

作る魅力

自作キーボードにおいては作るのにも楽しさがあります。
ハンダゴテを使う作業になるので、電子工作としてはやや難易度が高いのですが、部品のほとんどがキースイッチという耐熱温度の高い部品なのでハンダ作業としては難易度が低いです。
(一部ProMicroやLEDのような温度に弱い部品もあります)

またキーボードは複数の同じ部品をハンダするので反復作業になって、次第にハンダの使い方に慣れて上手くなっていくのが楽しいです。
あと、これは後々で知ったのですが、使いやすいハンダゴテを使うとほんとに作りやすさが全然違います。
最初はとにかく安いハンダゴテを買ったのですが、その後温度にシビアな部品をはんだづけしたくて、温度調整ができる白光のFX600に買い替えたところ、温度を気にしなくていいハンダ付けも簡単かつキレイな仕上がりになりました、
温度調整がついていると、コテ先の温度が常に一定になるので同じ操作をすると同じ結果が得られるようになり、ハンダを増やしたり減らしたり、予熱時間を変えてみたりといった工夫に対する結果がわかりやすくなって楽しくハンダができるようになりました。
良いはんだ量と予熱時間が見つかったらそれを繰り返すだけできれいなハンダがどんどんできるので楽しいです。

ハンダを付けている間は集中して無心になれるので、嫌なことやストレスも忘れることができます。
オライリーのハンダづけをはじめようという本の帯に、心が落ち着くと書いてあるらしいのですが、まさに心が落ち着きます。

自作キーボード界隈の難易度の低下と上昇

今年に入ってから日本の自作キーボード界隈は驚くほど盛り上がっていて、毎週のように新しいキーボードが発表され、部品の購入先が増え、コストが下がり、情報が出回るようになりました。
これにより、去年よりかなり簡単にキーボードを作ることができる環境が整ったように思います。
特に遊舎工房さんにより、それまで国内での入手が難しかったスイッチや安価なProMicro等の部品を殆ど国内で調達出来るようになったことは大きく、これにより購入の難易度が下がったばかりか、部品の送料も抑えることが出来てコストをかなり下げることが出来るようになっています。

一方で敷居が上がったという話も聞きます。
これは自作キーボード界隈ではそれまで市販品で済ませていたキーキャップをレジンで自作したり、パーツを自分で作るだけでなく大量発注して販売するなどとより高度化する傾向にあり、より高度なことをやる人達が増えてレベルが上っている状態です。
キッドを組むための敷居は一貫して下がりつつあります。

今注目のキッド

個人的に今注目しているキッドは次のようなものがあります。

Helixキーボード

今年の自作キーボード界でかなりの話題を持っていったのがこのHelixキーボード。
基盤をモナカのように割ることで4段と5段を切り替えられたり、(不可逆)ステンレスプレートを利用できたり、ロープロファイルという高さの低いキースイッチを使うことで薄いキーボードを作れるなど、意欲的な設計を多数盛り込んでいます。
キー数は片面25(4段)〜32キー(5段)で、2面合わせて50〜64キーとなります。
キー数は少なく、5段で組んでも両面合わせても小さくて有名なHHKBより小さくなります。

薄さに関しては圧倒的でHHKBと比べて半分以下です。(HHKBはそもそも薄さを売りにしている製品ではないですが)

このキーボードを組み立てる上での魅力は遊舎工房さんで一式まるごと購入することが出来ることで、これにより、購入するために必要な部品がわからないとか、足りないという事態を防ぐことが出来ます。
また、金額もかなりお手頃な価格となっており、市販のメカニカルキーボードとも勝負できるレベルになっています。

一方で実装においてははんだ付けがシビアで表面実装やかなり面積の狭いはんだ付けを要求されたりと難易度は高め。
あと、ロープロファイルのキースイッチは耐久性に難があり、長時間使い続けるのは不安があります。
とはいえ私は4枚ほど組んでしまいました。 はんだ付けの難しさはFX600に乗り換えていなければ実質作成不可能だっただろうなと思います。

Helix Pico

Helixの4段モードを固定にしチェリー軸との互換性を排してロープロファイルに特化したキーボード。
表面実装が必須だったダイオードが一般的なリードタイプに変更されていたり、Cherry互換を捨てることではんだ付けの面積が広がり制作の難易度が下げられています。
また部品数が減ったことで価格は更に下がっており、一台目としてとっかかりやすくなっています。
一方でキー数が少ないのでレイヤーの多様が必須で使い始めるまでのコストは大きめになります。

Fortitude60 C94 Limited Edition
Ergodoxに似たキー配置を持つキーボードです。
ProMicroのUSB端子が貧弱であることの対応として、USBを外付けのUSB-Cにしてあるなど耐久性を向上させて長く使える商品を目指して作られています。
一般的にサンドイッチや積層で作ることが多かったケースも箱組という新しい方法にチャレンジされています。
Ergodoxでは離れていた親指キーが近づいているのと、Ergodoxでは遠すぎて打ちにくかったキーが削られています。
難易度はやや高め

Infinity Ergodox

私を自作キーボードにハマらせてくれた一台。
残念ながら最近は殆ど生産されていないようで、Massdropsを見ていても大量のリクエスト数に対してほとんど購入可能になることはありません。
このキーボードのメリットは製作の難易度をとても低くなるように工夫されていることで、難しい部品は既に実装されていて難しいハンダの必要がありません。
基本構造であればキースイッチ以外はんだ付けする必要がなく、USBコネクタなども基盤に組み付けられているため強度面でもこだわって作られています。
いっぽうで、金額は高く、昨今の自作キーボード界隈の数倍の値段がついています。
また筐体が大きめなのも気になるところで、日本人にはやや持て余し気味な大きさだったりします。

おおよそ2015年まではキーボード界はHHKBがトップに君臨していてほぼ、HHKBを使っていれば上級者という傾向がありました。
それが2016年のErgodoxブームで一変し、2017年のLet's Splitブームを経て、2018年はオリジナル配列ブームとして多数の独自設計のキーボードが登場してきています。
かつて王者だったHHKBも今では入門機としても名前が上がらなくなっていている状況でこの変化の速さは、長年キーボードは一生モノと言われていたような状況からみると驚きの速さです。
まるでガラケーが飽和してスマートフォンが登場してきた頃のような衝撃を感じています。

また、私も他人の設計のキーボードを組んでいるうちに、自分で独自設計のキーボードを作りたいという欲求が出てくるようになりました。
そのための敷居も年々下がってきているように感じます。
はたして来年はどのようなキーボードが出てくるのでしょうか。

キーボードを自作するのに必要な部品

キーボードを自作する上であったほうがいい道具は次の通り。
ハンダゴテ(必須)
HAKKO FX600
購入報告をした途端に、電子工作界隈から良いものを買ったねというリアクションをもらったのですが、実際に使ってみてこれ無しでHelixを組むのは不可能だっただろうと思います。
最低限のキーを組むだけなら最安のハンダゴテでも良いかもしれませんがProMicroやLEDのように耐熱性の低いものや、Helixのようにはんだ量がシビアなものを組むときは温度調整ついていることがかなりきいてきます。。


コテ台(必須)
Amazonで一番安かったコテ台です。
ほかにもLED付きとか部品固定のクリップがあるやつとかも使ってみたのですがキーボードづくりには邪魔なだけで結局これと言って特徴がないこの小さなコテ台が一番使いやすかったです。


ハンダ(必須)
Helixを組み立てるにあたって、楽さ、品質の両面に大きく貢献したのが0.6mmの細いハンダでした。
それまで1mmのハンダを使っていたのですがそれだと表面実装やハンダ面積の厳しいところで使いづらい感じがありました。
一方で流れる量が多いのでキースイッチのような大きめの部品を組むときは0.8mmのようなやや太いハンダのほうが楽にハンダを流すことが出来ました。


ハンダ吸い取り線(ほぼ必須)

失敗しなければいらないのですが。。。 私はいくつかの場所で部品を取り付ける向きを間違ってしまってこれのおせわになりました。
仕事終わって夜にお酒飲みながらキーを取り付けていると いつの間にか反対方向にProMicroをはんだ付けしていたりするんですよね なぜか

フラックス(あると楽)

ハンダの表面張力を壊してダマになったりトゲを出にくくするためのもの。
通常はハンダの中に入っているヤニが溶けることで事足りるのですが、はんだ付けに手間取ってヤニが揮発してしまったりした場合に便利。
表面実装するときは仮ドメしたハンダをもう一度溶かすのでフラックスを付けておくと付きが良くなります。

フラックスクリーナー(あると楽)

フラックスが基盤に残っていると腐食の原因になるのでハンダ後に清掃するためのクリーナー。
自作キーボードではアクリルケースを使うことが多く、基盤が汚れていると目立つので、その防止の意味でも使いたい商品。

ピンセット(チップコンデンサを使う場合は必須)
チップコンデンサをつけるときに使用。 チップコンデンサを使わない場合は特にいらない気がする。

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